小児感染症とは

小児感染症

季節が変わるごとに子どもが発熱し、あるいは月に何回も体調を崩して学校をお休みしなければならないお子様に、さまざまなご心配をされる保護者様も多いのではないでしょうか。各感染症への罹患のしやすさは年齢によっても違います。下記に代表的な季節の感染症についてご説明いたします。

当院は、明らかな発熱および胃腸症状のある方と、そうでない方、そして感染力の強い麻疹、風疹、おたふく、水痘の罹患が疑われる方に対してのそれぞれ3つの待合室があります

当院ではみずぼうそう、おたふくかぜ、麻疹、風疹に関しましては、出入口を別にしておりますので、症状や流行状況により最初からこれら疾患の疑いをお持ちになって来院される場合は事前にご連絡ください。もちろん、判断がつかない場合はご来院されましたら、当院のスタッフが判断しご指示いたしますのでご安心ください。
皆様が適切な待合スペースでお待ちいただき、気持ちよく過ごせますよう、院内の感染防止を心掛けておりますのでご協力をお願い申し上げます。

1年を通して子どもがかかりやすい感染症

突発性発疹症

初めての乳児の発熱の原因でまず疑われる感染症です。潜伏期間は10日間から14日間で、3~4日間の発熱が続きます。特徴的なのは、解熱とともに発疹が出現するということです。対症療法のみで症状は自然によくなります。解熱していて機嫌がよければ集団生活が可能です。

溶連菌感染症

3歳未満のお子さんは少なく、どちらかというと3歳以上のお子様から小学校低学年までのお子さまがよくかかります。感染経路は飛沫感染で潜伏期は2~5日間です。症状は発熱のほか、急激なのどの痛みが特徴的です。抗菌薬を10日間内服していただくことで良くなります。しかし中には急性糸球体腎炎の合併症を発症することがあるため、かかってから2週間後と4週間後に尿検査を行い、検査所見に問題のないことを確認します。抗菌薬による治療開始後24 時間以内に感染力は失せるため、それ以降、登校(園)が可能となります。

マイコプラズマ感染症

主に小学生以降で多い肺炎の原因となります。潜伏期間2~3週間の後に発熱と咳嗽が出現します。マイコプラズマの診断は臨床症状から疑い、迅速検査の適応を判断します。より正確な診断には、結果を得るのに1週間期間を要しますが核酸同定法(LAMP法)も当院で行えます。検査が陽性あるいは症状から本感染症が疑われる場合は抗生剤を処方致します。内服すると3~4日で回復します。

みずぼうそう(水痘)

水痘帯状疱疹ウイルスに感染することで発症します。感染力が非常に強いのが特徴です。空気感染して2週間ほどの潜伏期間を経て発症します。症状は水疱疹が体中に現れ、時には顔にも出現します。通常は1週間くらいで自然に治ります。すべての水疱疹がかさぶたになったら、人への感染力は低くなったと判断され集団生活が可能となります。治療は皮膚症状に対する外用薬と抗ウィルス薬の内服があります。なお、1歳から3歳未満のお子さまの予防接種は水痘ワクチンが定期接種の対象となっています。同ワクチンの接種対象年齢に達したお子様は必ず受けるようにしてください。

帯状疱疹

過去にみずほうそうにかかったことのある人の免疫状態が低下したときに、神経節に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症します。みずぼうそうほど感染力が強くないのと、接触感染のみで飛沫感染や空気感染しないので、病変部を被覆していれば集団生活が可能です。ただし、みずぼうそうに過去にかかったことがなく、ワクチンの接種が済んでいない人が帯状疱疹患者と接触するとみずぼうそうにかかる可能性があるため、接触しないようにすることが必要です。

りんご病(伝染性紅斑)

ヒトパルボウイルスB19による感染症です。飛沫または接触感染により感染後約2週間たつと顔や手足に紅斑が出現します。この症状が現れる1週間前が最も感染力が強いといわれており、よって、赤い発疹が出ている期間が来たらすでに感染力は弱まっているため集団生活は可能です。妊婦さんは胎児に影響することがありますので、流行場所にはできるだけ近づかないように気を付けましょう。

春から夏に多い感染症

おたふくかぜ

ムンプスウイルスに感染することで発症するのがおたふくかぜです。感染経路は主に飛沫および接触感染で潜伏期間は2~3週間です。3~6歳に多いとされていますが、年齢が上がるにつれ症状は重い傾向があります。その症状は耳下腺が腫れて痛いのが特徴的です。診断が難しい場合は血液検査で抗体価を調べることもありますが、基本的には症状で診断し、治療は対症療法のみとなっています。耳下腺、顎下腺または舌下腺の腫張が発現した後 5 日を経過して元気であれば集団生活が可能です。おたふくかぜワクチンは、現状任意の予防接種で有料ですが、髄膜炎や難聴を発症することがありますので可能な限り接種することをお勧めします。

アデノウィルス感染症(プール熱)

上気道粘膜や腸管粘膜、そして結膜からウィルスが直接侵入することにより呼吸器感染症や胃腸炎、そして眼感染症をおこします。接触感染、飛沫感染、そしてプールで感染しうることからプール熱という別名があります。潜伏期は2日~10日とされています。全身症状として高熱(39 ~40℃)、のどの痛み、頭痛、食欲不振が 3 ~7日間続き、眼の症状としては、結膜充血、涙が多くなる、眼やになどがあります。これらの症状がなくなってから2日経過したら集団生活が可能です。

手足口病・ヘルパンギーナ

エンテロウィルスによる感染症です。潜伏期間は1~5日で、接触感染、飛沫感染します。症状として口腔内に水疱疹が出現するという共通点がありますが、てのひら、足底または足背にも水疱があれば手足口病、なければヘルパンギーナという診断となります。発熱が1~4日続き、口の中が痛くて食べられないお子さんが中には出てきますが、基本的には軽症で自然に治ります。全身状態がよくて、発熱がなく、口腔内の水疱の影響がなく普段の食事がとれる場合は登校(園)可能です。ただし集団生活開始後もウィルスそのものの排出期間が比較的長くつづいているという理解のもと、手洗い(特に排便後)をしっかりするようにしましょう。

冬に多い感染症

RSウィルス感染症

乳幼児が主に感染し、呼吸器症状(咳、鼻、喘鳴)が強く出て呼吸状態や哺乳に影響を及ぼします。発熱や呼吸器症状は1週間程度で自然に治りますが、3~4週間くらい咳や鼻水が持続することもあります。とはいえ、2歳までにほぼすべての乳幼児がすくなくとも1度はかかるといわれています。主に接触感染し、潜伏期間は3~5日間です。最初の感染が一番症状が重いですが、生涯に何度でも感染を繰り返します。1歳未満の子どもが罹患を疑われた場合初感染で重症となる可能性があるため、迅速抗原診断キットを用いた診断を保険適応の範囲で行います。また、RSウィルス感染症が重症化しやすい赤ちゃんやお子さまには、RSウィルスに対する抗体注射(シナジス)が保険適応となります。対象となるお子さまは下記の方となります。該当される場合はご相談ください。

予定より早く生まれた(早産児)

お母さんのお腹にいた期間が28週以下で、RSウイルス流行開始時に 12ヵ月齢以下
お母さんのお腹にいた期間が29〜35週で、RSウイルス流行開始時に 6ヵ月齢以下

肺の病気を患っている(慢性肺疾患)

過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症などの呼吸器疾患の治療を受けたことがあり、RSウイルス流行開始時に24ヵ月齢以下

生まれつき心臓の病気を患っている(先天性心疾患)

RSウイルス流行開始時に24ヵ月齢以下の先天性心疾患児で、血行動態(心臓や血流)に異常がある

生まれつき免疫機能低下の病気を患っている

RSウイルス流行開始時に24ヵ月齢以下で免疫不全を伴う

ダウン症候群である

RSウイルス流行開始時に24ヵ月齢以下

ロタウィルス感染症(感染性胃腸炎)

接触感染により、潜伏期間1~2日を経て激しい嘔吐や下痢症状が出ます。乳幼児の場合、それに伴う脱水症状で点滴が必要になることがあります。ロタウィルスワクチンの目的は、けいれんや脳症を合併することもある重症な胃腸炎の予防にあります。ウィルスの感染力は非常に強く安定しており、ウィルスが手指や器物の表面に付着すると数時間から数日間も感染力を維持しながらとどまるといわれています。発症後少なくとも1週間は糞便中にウィルスが排出され感染源となりますので、おむつ交換後には手洗いの励行が重要です。特効薬はないため自然軽快を待つしかなく、胃腸症状が消失すれば集団生活は可能です。

ノロウィルス感染症

ロタウィルスが乳幼児に多い胃腸炎ウィルスであるのに対し、ノロウィルスは乳幼児のみならず、学童や成人にも多くみられ、再感染もまれではありません。潜伏期間は1~2日ですが、感染後12時間くらいで嘔吐や下痢、腹痛、発熱などの症状が現れることがあります。脱水の予防には、経口補水液が有効です。また今のところ治療薬やワクチンはなく、予防することが重要です。具体的には流水下で石鹸を用いた手洗いを行う、食品が原因となることがあるため十分加熱して食べる、といったことが挙げられます。胃腸症状が消失すれば集団生活は可能です。

インフルエンザ感染症

インフルエンザウイルスはA、B、Cと3タイプあり、我が国で季節的に流行するのがA型とB型です。咳や鼻汁からの飛沫感染が主で、ウィルスの潜伏期間は1~2日です。38℃以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、寒気などの全身症状が現れるようになります。さらに風邪の症状(鼻水、咳、のどの痛み など)もみられます。
また小児では、けいれんや中耳炎のほか、急性脳症の症状が稀に起きることがあります。熱は発症後2~4日で治まるようになりますが、咳や痰などは10日間ぐらい続くことがあります。症状の一部としての異常行動は抗インフルエンザ薬の有無にかかわらず注意すべきであり、慎重な見守りを要します。鼻咽頭ぬぐい液を用いた迅速診断キットの存在はすでに有名ですが、発症翌日が最も検出率に優れているといわれています。このため、発熱に気づいてすぐに来院されても偽陰性(本当は陽性なのに陰性と出てしまうこと)場合がありますので、ご注意ください。

治療は、対症療法が中心ですが、診断された場合には抗インフルエンザ薬を処方しますので、内服、吸入どちらかを年齢によって選択していただきます。なお日本での流行期は、12月~翌3月頃ですので、インフルエンザワクチンは通常10月~11月に開始されます。インフルエンザワクチンは重症化を予防するために接種することをお勧めします。生後6か月から接種可能です。学校保健安全法では、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで。幼児においては、発症した後 5 日を経過し、かつ解熱した後 3 日を経過するまで 」が、出席停止の目安とされています。

まとめ

お子様が罹患しやすい感染症はまだまだ数多く存在しますが、定期・任意含め接種可能なワクチンは、その感染症にかかりにくくし、かかっても症状が重くなるのを防ぐ重要な役割を担っております。当院ではワクチン専用の時間帯や学校帰り、また土曜日にも接種可能な時間帯がありますので、ぜひご活用ください。