開院当初から、私のクリニックでは、起立性調節障害に関する診療のお問合せを多くいただいております。埼玉県や千葉県といった都外から、多くの患者様がいらっしゃいます。しかしそれは、私が名医だからという理由ではありません。診療を行う医療機関が少ないからという理由なのです。
起立性調節障害に対する本格的な診療の開始は、私が小児循環器に携わり始めて10年くらいしてからのことでした。もちろん、病気についての知識はありましたが、あらためて循環器科医として向き合ってみようと思ったのがそのころだったように思います。起立性調節障害の患者様は、”小心臓“を合併することを知り、”小心臓”とは何ぞや?という疑問から私の研究は始まりました。
”小心臓”とは、胸部エックス線上で定義される、いわゆる胸郭の幅にたいする心臓の幅が狭い所見を指します。これそのものは、とくに病気ではありません。実は私自身、”小心臓”なんです。小心臓の歴史は1944年、Masterによる報告1)が最初です。アメリカ海軍の厳しいトレーニングについていけず、息切れ、胸痛、動悸や易疲労感を訴える一定数の成人若年男性にこの”小心臓”が多いことを指摘しました。1990年、日本の論文からも、起立性調節障害の小児は”小心臓”の合併頻度が健常児より7.5倍高いと報告されました2)。この”小心臓”となる理由については、さまざま考察があり、いまだよくわかっていないことが多いのですが、私は循環器科医として、起立性調節障害の病態について興味をもちました。本ブログの最後に添付いたしましたように、来月2024年3月24日には講演がありますので、もしご興味がある方はぜひご視聴いただければと思います。
さて、私は、起立性調節障害の患者様に対して、毎回必ず申しあげるセリフがあります。それは、「あえて、病気とは思わないでおきましょう」ということです。私もじつは、”小心臓”と関連しているのかわからない、たちくらみやめまいといった現象に悩まされてきました。そして、今も疲れると出やすいかなと思っています。乗り物酔いもしやすく、車中で携帯や本を見て過ごすことはできません。治したいと思っても治療がないのです。人をうらやましく思う気持ちもありますが、我慢すればその先に自分のやりたいことが待っていると思えば超えられる気がしています。みんな、そのような気持ちになってくれとはもちろん思いませんけれども、何がいいたいかというと、「自分の体質ととらえて、抗わずに付き合っていく」ことが大事だということです。その時、自分ができることは何か。一生懸命向き合えば、たとえその場で報われなくても必ず明日はきます。あきらめないで明日に繋ぐ希望を持ってほしいなと思います。
そして、起立性調節障害に悩む患者様の保護者様へ。どうか、焦らず、お子さんを見守ってほしいと思います。よい時期と悪い時期とが交互のようにして繰り返す、大変波のある体質です。私の診療においては、循環器科医として向き合うことで、起立性調節障害の体質があるのか、体質はなく精神的につくられたものであるのか、「起立テスト」と「問診票」から、自分の診療経験をもとに判断するということを得意としています。起立性調節障害の体質がある方はすなわち循環動態の異常がみられるなので私の守備範囲ですが、精神的な悩みが大きく起立テストは正常の方に関しては、最初から思春期外来や心療内科をご紹介しておりますのでご了承下さい。
多くの患者様が中学生から高校生の年齢ですが、彼ら彼女らとの会話のなかで私は自分自身のことをときどき思い出します。勉強ってそんなに楽しかったかな?友達ってそんなにたくさんいたっけな?部活って結構くるしかったよね。親って厳しかったよね。自分が何をしたいのかわからずにもがき苦しんだときのことを思い出すのです。いい言葉が見つからないときは、歌手アンジェラアキさんの「手紙~拝啓十五の君へ~」をうたって応援したいという気持ちになります。私は正直、今が一番楽です。その分、子育てで苦しいと感じることもありますが、それは自分事とは違います。年々、執着とおさらばして、楽になっていくように思います。さまざまな葛藤で苦しかった若い頃の自分には少しも戻りたくないと思います。だから、「若いっていいわよね」っていう言葉は私の中にはないです。「若い」って苦しいこと。でも、その苦しさにどこか気づきながら自己爆発を繰り返しながら前進する。それが「若いっていいわよね」の意味なのかもしれません。なりたい自分になれる、今この瞬間、目指したときから。そう信じて、今は動けなくても、未来に希望を持ってくださいね。
最後に、こうしたブログを書きながら、ほとんど起立性調節障害の診療予約がとれない状況であることをお許しください。とくに発熱患者様の多いこの時期は対応が困難でして、一般診療が落ちつく春先から夏頃は、診療枠を少し増やしたいと思っています。ご予約までの数か月に、このブログが何らかの気休めになれば幸いです。
1)Master AM: Neurocirculatory asthenia due to small heart. Med Clin North Am 1944;28:577–588
2)T.Abe The small heart syndrome. Asian Med J. 33(6) 295-302,1990.
Let me tell you about Orthostatic dysregulation (OD) on this blog. OD is commonly contracted between the ages of 10 and 16. The main symptom of OD is dizziness while standing, which in severe cases leads to people falling over. Because it mainly occurs in the morning, some children with the condition may complain of tiredness in the morning and refuse to go to school. There are few doctors who can recognise the symptoms of this condition, so we receive inquiries from many patients with OD. During physical examinations, I do orthostatic tests for 10 minutes after short consultations to determine the subtypes of OD. If the data shows a normal pattern, your symptoms may mainly be caused by psychiatric problems. I am careful to prescribe medicine in accordance with the findings, whatever they may be. If you have any symptoms of OD, please contact us and make an appointment in advance before you come.