2022.2.27当院で接種する方は必ずお読みください!小児コロナワクチンのご案内 COVID-19 vaccination for children planning guide

5歳から11歳までの小児を対象としたコロナワクチンは、当院でも3月中旬から下旬に開始できるよう準備を進めていますので、接種を検討中の保護者様は本ブログをご一読いただけますと幸いです。さて、国が努力義務対象外としているワクチンをあえて接種しようかどうしようか。健康な対象年齢の子をもつ親なら少なからず悩むところなのかなと思います。子どもはコロナに罹患してもたいてい軽症であるとみんな思っているけど、そうでもないらしいよ、という情報があったとしたら?このブログではそのことについて触れ、最後に小児コロナワクチンの副反応や安全性について検討した論文を引用してそのデータの一部をご紹介したいと思います。

1. ワクチンの接種意義について考える

ワクチンの接種意義は大きくわけると二つあると思います。一つ目は集団免疫を成立させて、コロナウィルスの蔓延を終息させることです。感染流行が続く限り、ウィルス変異株の出現から逃れることはできないでしょう。二つ目は、感染による重症化を防ぐことです。子どもはたいてい軽症で済みますが、血管親和性の高いコロナウィルス特有な合併症として、小児 COVID-19 関連多系統炎症性症候群(multisystem inflammatory syndrome in children:MISC)という新しい疾患概念に該当する症例が散見されています。この病気はコロナウィルスに罹患してから2~6週後に発症することが多く、その発生頻度は罹患した子どものうち0.25~0.4%の確率であると報告されています。症状は、川崎病と類似した血管炎として皮疹や心筋炎などの心臓の合併症がある一方、強い腹部症状(下痢、嘔吐、腹痛など)が半数以上にみられる点が川崎病と少し異なり、心機能の低下によって低血圧やショックなどの循環不全や、血液凝固系の異常を伴うなど全身性のより重篤な炎症をおこしうる疾患です。また、発症年齢の中央値が9歳前後ということで、4歳以下に好発する川崎病よりやや高年齢ということがいえます。まだまだこの臨床像は報告の段階であり、全てが解明されているわけではありませんが、子どもは軽症で終わるとだれもが思いがちなコロナウィルス感染症罹患後に、こうした重篤な病気の発症が知られていることは事実です。

参考文献

1. 小児 COVID-19 関連多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)診療コンセンサスステートメント

2. Zeynep Ergenc, et al: Incidence of MIS-C and the Comorbidity Scores in Pediatric COVID-19 Cases. Pediatr Int.2021 Dec 4. doi: 10.1111/ped.15084. 

3. Holm M, et al. Multisystem inflammatory syndrome in children occurred in one of four thousand children with severe acute respiratory syndrome coronavirus 2. Acta Paediatr. (2021) 110:2581–3. doi: 10.1111/apa.15985

2.ワクチンの副反応(安全性)について考える

小児コロナワクチンは成人コロナワクチンの接種量の3分の1(10μg)です。この量を1517人の5歳から11歳の小児に接種し、予防効果や副反応を検討した下記の論文によると、約4か月間の観察期間ではありますが90%以上の高い発症予防効果を示しました。さらに、2回目接種から1か月後に測定した中和抗体量は、16歳以上で30μgを接種したグループとほぼ同等であったことが証明されており、どうやら成人ワクチンと同等の効果が小児ワクチンでも見込めると考えてよさそうです。一方副反応に関しては、局所の疼痛が最も多く約70%、1回目または2回目接種後の38度以上の発熱は全体の8%にみられ、ほか成人の副反応ですでに知られているような頭痛や全身倦怠感、悪寒といった症状もみられますが、いずれも1~2日以内で改善しています。現在も観察継続中ではありますが、先に述べたMISCがワクチンによって発症したというケースは1例もありませんでした。

参考文献

Walter EB, et al: Evaluation of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Children 5 to 11 Years of Age. N Engl J Med 2022; 386:35-46

3.実際に子どもに接種させるか考える

日本小児科学会https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=404は、今後、全年齢において感染者数が増加した場合には、ワクチン未接種の小児が占める割合が増加し、小児の中等症や重症例が増えることが予想されるという理由もあって、「5~11歳の健康な子どもへのワクチン接種は12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義がある」と提言しています。

一方、日本小児科医会 https://www.jpa-web.org/blog/uncategorized/a275は、「 本ワクチンの効果は感染予防のためというよりは、むしろ発症時の重症化予防のためのワクチンとの意味合いが大きいことから、そもそも重症化することが稀な小児期の新型コロナウイルス感染症においてのワクチン接種の意義は成人・高齢者への接種と同等ではないといえる。」とやや消極的な提言のようです。

種々データが不ぞろいで観察期間の短い現段階で、コロナウィルス感染症による重症化の頻度をどのようにとらえるか、ここが接種希望の有無の一つの分かれ目かもしれませんね。

しかし、どちらの提言においても、基礎疾患を有する小児へのワクチンを推奨している点は共通しています。持病のあるお子様の保護者様は、通院先の専門医と相談されることをお薦めします。私の専門である小児循環器領域では、 下記の疾患の方はコロナウィルス感染症により重症化するリスクが高いためワクチン接種を検討すべきとしてリストアップされています。以下、小児循環器学会のホームページより抜粋です。

  • 複雑な先天性心疾患の方(手術前、手術後)
  • 単心室(フォンタン手術後)
  • 酸素飽和度が低い、またはチアノーゼがある
  • 心臓の力が弱っていたり、心不全がある
  • 不整脈がある
  • 肺高血圧などの肺の問題がある
  • 過去3ヶ月以内に心臓の手術を受けている
  • 先天性心疾患以外に肝臓、腎臓、内分泌などの他の疾患を患っている
  • 心臓移植を予定している人、もしくは移植を受けた人
  • ダウン症候群、22q11.2欠失症候群、無脾症候群、多脾症候群
  • ステロイド剤や免疫抑制剤の使用など免疫力低下のある人

通常診療の際にでも、事前のワクチン相談に応じていますので気軽に院長までお声かけください。1回目と2回目の接種間隔は3週間です。それ以上空いても構いませんが、キャンセルの場合は体調の良い時に早目に接種するように心がけましょう。他のワクチンとの同時接種はできません。他のワクチンとの接種間隔は2週間です。予約はインターネット予約のみとさせていただきます。ワクチン同士の接種間隔は自己管理でお願いします。日程を誤って予約を取ってしまい当日接種できなくても、責任は負いかねますのでご了承ください。また、接種の際には、接種部位である肩がでるよう、準備万端(半袖Tシャツをインナーに着る、脱ぎ着しやすい洋服にする、など)のうえお越しください。初診の方の受付も行いますが、持病のある方は、それを診てもらっている先生から紹介状をご持参いただき、事前にご相談くださいますようお願い申し上げます。

最後に、これらはあくまで2022年2月末現時点までに得られている情報ですので、ご了承ください。

Now we are preparing to start the COVID-19 vaccine for children aged 5 to 11 years old, from the middle of March. The vaccination needs to be administered twice at least 21 days apart. Your child cannot get any other vaccine at the same time. The interval of vaccination for the COVID-19 vaccine and other vaccines needs more than two weeks. It is only available via internet booking.

CDC (Centers for Disease Control and Prevention) recommends everyone aged 5 years and older get a COVID-19 vaccine. The reasons are as follows:

1. It is known there are serious complications, like multisystem inflammatory syndrome (MIS-C), with children who get infected with COVID-19. MIS-C has severe symptoms with multisystem organ failure (cardiac, renal, respiratory, hematologic, gastrointestinal, dermatologic, or neurological) that need to be hospitalized.

2. COVID-19 ranks as one of the top 10 causes of death for children aged 5 to 11. According to the CDC website, it has been reported that children aged 5 to 11 have experienced more than 8,300 COVID-19 related hospitalizations and nearly 100 deaths since mid-October, 2021.

Serious complications are rare after COVID-19 vaccinations, although pain on the injection site or redness may occur in higher frequency. Tiredness and headaches are the most reported systemic events.

Please feel free to ask us if you have any questions about the COVID-19 vaccine for children aged 5 to 11 years old.